アメリカ株と日本株の投資割合

 

私(江戸庄蔵)の家族の日本と外国(主にアメリカ)の投資割合は以下の通りです。私と連れ合いは主に株式ETF、子供たちはインデックスファンドを持っています。

  •                   日本 : 外国
  • 江戸庄蔵  2 :  8 外国は全世界
  • 連れ合い  4 :  6 外国はアメリカのみ
  • 子供達   0 : 10 外国は先進国

日本株はどのくらいの割合で保有したらよいのでしょうか?最近は特にアメリカ株が脚光を浴びていますので、様々な記事で確認します。


日本人はアメリカ株投資の魅力をわかってない(東洋経済2021/05/04)

30年で12倍と「ピークに戻ってない市場」との差

最近、アメリカ株への直接投資がブームになっているそうだ。世界中でコロナ禍が続く中で、日本の株式市場は足踏みを続けているが、好調な景気指標が発表される中でアメリカ株の好調さが際立っている。

4月に入ってからもニューヨークダウは最高値を更新し続けており、S&P500も史上最高値を更新した。長期金利の上昇で一時的に下落したナスダックの株価も回復トレンドを見せている。

そんなアメリカ株の魅力について指摘する報道も多く、日本の投資家が国内からオンライン証券などを使ってアメリカ株に投資する人が増えているといわれている。実際に、インターネット証券大手3社のアメリカ株を中心とした海外株の売買代金は、コロナのパンデミックが起きてから大きく伸びている。2020年は前年の約4.5倍に当たる9兆2000億円の資金が海外株売買代金に充てられている。

SBI、楽天、マネックス、松井、auカブコムの大手ネット証券5社を対象に調べたデータでは、2020年度の年代別口座開設は20~30代が70万口座と突出して多かった。例えば、楽天証券では30代以下の顧客が今年3月のアメリカ株の買越額が昨年の4月に比べて約5倍になったと報告されている。日本株の買越額と比べると17倍の大きさになる。

アメリカ株投資のトレンドは、この1月に発生した「ゲームストップ」騒動でさらに拍車がかかり、アメリカの小型株や新規上場(IPO)株にもターゲットが向かっていると言われている。

日本の株式に比べて株価が短時間で大きく上昇するケースも多く、日本株にはない魅力に、日本の若者が気づいたという現実があるようだ。最近、ネットの広告でも「日本株はせいぜい年間に10~20%程度上がればいいが、アメリカ株は短期間で10倍、20倍になる」というフレーズが流れているが、確かにアメリカ市場では10倍、20倍に上がる株も珍しくない。

30年ぶりの高値でも魅力がない日本の株式投資

一方、30年ぶりに日経平均株価が3万円台を回復した日本の株式市場だが、個人投資家の投資比率はせいぜい20%程度で、これまでさんざん苦汁を飲まされ続けてきた個人投資家にとって、日本株はそう簡単に投資できるマーケットではないのかもしれない。

昔から、日本の投資家はよく「最高値で買って、最安値で売る」と揶揄された。それは投資家が悪いのではなく、活力を失った日本の株式市場がいけないともいえる。魅力ある日本企業がなくなってきた――そんな意識が、若者を中心に芽生えつつあるのかもしれない……。

実際に、アメリカ株と日本株との間にはどれだけの差があるのだろうか。簡単に整理すると次のような点が指摘される。

<アメリカ株の魅力①>
とにかく上がるアメリカ株、一向に上がらない日本株

過去30年間の日米の株式市場を振り返ってみると、その差は一目瞭然だ。株価指数の「S&P500」で見ると、1990年末の段階で330.22、2020年末の時点では3756.07。30年でざっと11.3倍に上昇した。周知のように、その後も株価は上昇し続けて、直近の数字では4180.17(2021年4月23日現在、終値)、12倍を超えるパフォーマンスになっている。

一方の「東証株価指数(TOPIX)」では1991年3月末時点の指数が1970.73。30年後の2021年3月末では1954.00となっている。日経平均株価は3万円を回復したものの、ピークに届いていないし、もちろん東証株価指数も最高値を更新できていない。12倍になった市場と30年前の最高値を更新すらできていない市場ではとても比較にならない。この30年間、日本の投資家がいかに厳しい戦いを強いられてきたかがわかるはずだ。

<アメリカ株の魅力②>
DX、AI、EV……、アメリカ企業は最先端技術の宝庫
最先端技術はアメリカ企業が握っている

アメリカ株の魅力は、ただ単に株価が日本株に比べて上昇のスピードが速いというだけではない。その背景には、現在の産業活動の最先端の技術はアメリカ企業が握っていることと関係している。

GAFAも、もとはと言えば過去の最先端技術を応用した成果と言ってもいい。現在では、AI(人工知能)や DX(デジタルトランスフォーメーション)、フィンテック(ファイナンス・テクノロジー)といった、これからの産業社会を支える技術を持っている企業が多い。

加えてグリーン化(脱炭素社会)といった世界的なトレンドの中で、その技術的なリーダーになっている企業が多い。日本企業の中にも、燃料電池やDXの最先端技術を持っている企業も少なくないが、アメリカが基礎的な技術部門に強いのに対して、日本の企業はそうした最先端技術を使って商品をつくるとか、応用技術を駆使してビジネスを行う企業が多い。半導体開発そのものよりも、半導体を製造する機械は世界のトップレベル……、という具合だ。ベースとなる基礎的な最先端技術を持った企業がアメリカの株式市場には数多く上場していると言うことだ。

コロナ禍の中でも、ナスダック市場などの「グロース株」が急成長したが、将来の成長を先取りしすぎて、現在は一時期の勢いを失っている。ワクチン接種の普及によってパンデミックの収束が見込まれるようになってきたが、これまで厳しい景気の後退で見放されていた「バリュー株」が買われるようになってきた。

要するに、アメリカ市場ではつねに世界に先駆けて先を見越した投資行動が行われており、そういう意味でもアメリカ市場には魅力があるといっていい。

<アメリカ株の魅力③>
収益力が高い企業が多く、高配当銘柄も多い

アメリカ株の魅力で忘れてならないのは、その収益力の高さだ。アメリカの企業は、会社は株主のものという認識が非常に強く、株主から集めた資本をいかに活用して経営者が株主に還元できるかを重視する。日本の企業は、会社は経営者や従業員のものという意識が強く、一部の経営者が自己保身のために延々と誤った経営判断を繰り返してきた一面がある。

ROEは日本5.5%、アメリカ11.9%

実際に株主資本に対していくらの利益を稼ぎ出したかを示す「自己資本利益率(ROE)」という指標があるが、2020年7月時点で日本は平均5.5%、対してアメリカ企業は同11.9%となっている。つまり日本の企業に比べてアメリカの企業は、2倍稼ぐと言うことだ。

収益力が高いから、アメリカには高い配当利回りを出す企業が数多くある。しかも20年以上増配を続けている企業なども数多くある。

日本で配当の高い企業というのは大きく分けて2つあり、実際に高い収益を上げて利益還元のために配当を出している企業もあれば、その一方で高い利回りを出すことによって株価の維持を図っている企業も多い。こうした企業の中には、株価を高く維持することで経営者の保身に役立っているケースもあり、日本で高配当銘柄に投資するのはある意味で慎重にならざるをえない。

その点、アメリカの場合は株主のチェックも厳しいために、業績が悪いのに高い配当を出そうものなら厳しく糾弾される。そういう意味では、アメリカ企業の高配当利回りは日本よりは安心して投資できるのかもしれない。

<アメリカ株の魅力④>
少ない投資金額で投資ができる

アメリカ株の魅力のひとつとして忘れてはならないのは、アメリカ株は日本と違って「単元株」といったシステムがないために、すべての銘柄が1株から投資できることだ。1株から投資できるということは、例えば「アマゾン」のような3000ドルを超える値がさ株でも、3300ドル=35万円程度で投資できることになる。

アップルとかフェイスブックといった有名な企業でも、130ドル台(1万3900円)から300ドル台(3万2000円)程度であり、数万円程度の金額で投資ができることになる。

ディズニーへの投資も約2万円から可能

例えば、アメリカのウォルトディズニーは183ドル(約2万円、株価は2021ねん4月現在、以下同)から投資できるが、日本のオリエンタルランドは、株価が1万5000円、単元株100株で、最低投資金額は150万円になる。

要するに、日本では数百万円の投資金額が必要な銘柄が数多くそろっているということだ。若者たちにアメリカ株投資が人気なのも、高額な資金が必要な日本株よりも、少ない資金で投資参加できるアメリカ株のほうが魅力的に映るからだろう。

そしてもう1つ大きな魅力は、アメリカドルで投資ができることだ。自分の資産を日本円だけで持っていることに不安を感じている人は少なくないはずだ。万一、日本円が暴落したときにきちんと国際分散投資をしていない人や、預金だけに資産を集中させている人は、莫大な損失を余儀なくされるかもしれない。

その点、アメリカという将来的に有望な株式で、円ではなくアメリカドルで保有することができる……。これもアメリカ株投資の大きな魅力と言っていいだろう。

<アメリカ株の魅力⑤>
世界中の投資家が支えるアメリカ株、日銀しか支えない日本株

アメリカ株の魅力のひとつが、「時価総額」が大きいという点がある。上場企業の発行済み株数に株価を掛けた値で企業価値を示すバロメーターといえる。時価総額が大きいということは企業の大きさや将来の成長力などを示しており、時価総額=企業の安定の度合いと考えてもいい。

世界で最も時価総額が高い企業は、2021年3月末時点では第1位がアップル。2位はサウジアラビアの「サウジアラムコ」だが、3位以降は「マイクロソフト」「アマゾン・ドット・コム」「アルファベット」「フェイスブック」そして中国の「テンセント」と続く。日本では上位50社に入っているのは44位の「トヨタ自動車」だけだ。世界的に見れば、日本の企業はどれも小粒といっていい。

世界の時価総額の4割はアメリカ株が占めていると言われており、アメリカ株の時価総額の大きさは、世界中の投資家がアメリカ株に投資をしていることを意味している。万一、株価が大きく暴落しても世界中の投資家が支えてくれる可能性を秘めている。

日本は、中央銀行の日本銀行が支えていると思うかもしれないが、中央銀行が買い支えるということは、株式や債券に出資すればするほど、いずれは「円」の価値が下落することを意味しており、結局のところ最終的には頼りにならない。

世界中の投資家が支えてくれるアメリカ株と日銀しか頼りにできない日本株ではその基盤がまったく違うといっていい。これもアメリカ株の大きな魅力のひとつと言っていいだろう。


日本株に「沈没」の警句 政策依存に限界、マネー流出 (日経2021年12月20日)

米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締め方向に転じ、グローバルマネーの迷走が始まった。外部環境の悪化を機に2022年は日本の構造問題に焦点が集まる可能性が高い。最近、小松左京氏のSF小説「日本沈没」のドラマが話題になったが、突然、国土を失い国民が流浪するというメッセージは、国土を信用、国民をマネーに置き換えると現在にも当てはまる警句だ。

まず米資本市場の変調に目を向けよう。注目されるのが物価変動の影響を除いた期待リターンである「実質益回り」の低下だ。1株利益を株価指数で割った名目の益回りから消費者物価指数の上昇率を引いて出す。試算すると米S&P500種株価指数は6月時点でマイナス1.65%。リーマン・ショック直前の08年7月以来の低水準だ。物価高騰で見た目の株高とは裏腹に「実質的な資産価値の減価が起きている」(東京海上アセットマネジメントの平山賢一氏)。実質益回りのマイナス化は1980年前後や終戦直後の40年代後半以外はあまりみられない。

米新興企業への逆風は強まっている。7月以降に米国に上場した約200銘柄中、直近で初値を割り込んでいたのは全体の7割以上に上る。初値比の平均騰落率は18%下落。同じ期間に上海・深圳市場に上場した200以上の銘柄は、ほぼ半分が初値を上回っている。

問題は今後、米株がクラッシュした場合の日本株の耐久力だ。東証株価指数(TOPIX)の実質益回りは4.7%程度。米株に比べると割安感はある。だが今年、市場で起きた重大な変化を見逃す事はできない。

年初から17日までに円は対ドルで9%下落した。ユーロや英ポンドなど主要通貨の中では「最弱」だ。南アフリカやインドなどの新興国通貨よりも下落率が大きい。東京市場で同じ日に株安・円安・債券安(金利上昇)のトリプル安となった日数は今年、28と昨年から7日増えた。

アベノミクスという「モルヒネ(麻薬)」を長期投与した結果、市場も企業も知らぬ間に政策依存体質となり、そんな市場から海外勢は距離を置き国内勢は企業買収や証券投資などの形で海外に徐々に逃げ出している。

突然の物価の上振れリスクも対岸の火事ではない。資源を海外に依存する日本にとって万が一、日本周辺で有事となればなおさらだ。二・二六事件を境に軍部が台頭し、財政規律が緩んだ途端、物価が急上昇し、価格統制に追い込まれたという30年代後半以降の苦い過去もある。

バブル期までの日本は困難を民間の創意工夫で乗り越えたが、その後、少子高齢化や労働市場の分断で経済的ショックへの対応は財政・金融政策頼みになった。政府の借金は1200兆円を超え、日銀の総資産は10年で5倍に膨張。東証1部では「声なき株主」日銀が間接的に大量保有する企業数が全体の2割を超えた。株安を、事実とは言いがたい「岸田ショック」と叫ぶ市場の声は政策依存体質の表れとはいえないか。

トリプル安は「(既得権を優先し革新できない)イノベーションのジレンマにとらわれた日本」(BNPパリバ証券の河野龍太郎氏)の写し絵ともいえる。長い目でみて日本がマネーを取り戻すためには、まず日銀が異次元緩和の出口戦略を明確に示す必要がある。

今年の下値支持水準となった2万7000円は重要な「防衛ライン」だ。この水準を割り込むとチャート上は2月と9月、11月を高値とした「三尊天井」の形となり上昇相場の終わりを告げる可能性が浮上する。


日本株を買わない日本人 新しい資本主義「貧しくなる」(日経2021年12月19日)

日本人が日本株を買わなくなった。コロナ禍で広がった現役世代の「貯蓄から投資へ」も、お金の向かう先はもっぱら米国を中心とする海外株だ。巨額の利益を稼ぐ米ハイテク企業と比べると、日本企業の成長ストーリーは色あせて見える。日本株を支えた日銀や公的年金の買いも今後は細り、いずれ売りに回る。このままでは買い手が誰もいなくなる。

「日本株はもはや泥船だ」。東京都の兼業投資家、乙丸英広さん(40)は12月に入り、約1千万円分の日本株をすべて売却した。2020年はマスク関連株などで利益が出たが、今年は買った株が下がるばかり。「なぜか日本株だけ上がらない」という焦燥にかられ、不満を抑えきれなかった。

岸田文雄政権が掲げる「新しい資本主義」にも不信が募る。「金融所得課税を強化すれば、富裕層や起業家が海外に逃げてしまうだけ。残った国民がみな貧しくなっていく気がしてならず、そんな国の株に投資したくない」。SNS(交流サイト)でつながる投資仲間たちも同じ考えだ。

不満を抱えた日本の個人マネーは米国株をはじめ海外市場に流出している。日本株に見切りをつけた乙丸さんは約1千万円を米S&P500種株価指数の上場投資信託(ETF)に回した。アップルやアルファベット(グーグル)など巨大IT(情報技術)プラットフォーマーを含む米国株500銘柄をまとめ買いしたわけだ。

個人投資家の日本株離れは公募投信の人気ファンドの顔ぶれにも浮かぶ。21年1~11月は首位の「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株」に1兆2375億円、海外株ファンド全体では約7兆3000億円が流入した。一方、日本株ファンドは売れ筋から姿を消し、400億円強が流出した。

史上最高値を更新しつづける米国株には先行き警戒感もくすぶるが、日本の投資家は下がるとすかさず買いを入れている。財務省によると、新型コロナの変異型「オミクロン型」の出現で米国株が弱含んだ12月第1週(11月28日~12月4日)に、日本の投資家は米国など海外の株式と投信を計1兆2150億円買い越した。これは統計を遡れる05年以降で最大の買い越し額だ。

市場関係者は「世界の中で最も強く成長を感じられる米国に投資家はお金をシフトするようになっている」(野村証券の中村希商品企画部長)と口をそろえる。

企業経営の効率性を示す自己資本利益率(ROE)と株価上昇率との長期的な相関関係をみれば、根本的な動機は一目瞭然だ。日本企業の過去20年のROEは平均7.3%にとどまるが、米国企業は13.0%に達する。このROE格差が縮まると期待できない投資家が増えている。

一方で米国株投資のハードルはぐっと下がった。マネックスグループの松本大最高経営責任者(CEO)は「自動翻訳ツールの進歩とSNSの普及によって個人の情報収集が容易になった」と指摘。顧客の米国株の買い付け額は21年1~11月に前年同期に比べて6割増えたという。

東京都のサラリーマン投資家(34)は12月、運用資金の大半を日本株から米国株に移すことを決めた。「注文はスマホの米国株専用アプリ経由。ゲームのような手軽さで、帰宅後に寝転がりながらリアルタイムで売買できる」

振り返れば、高度成長期以降の日本株は買い手が3回変わった。バブル期までは金融機関と事業会社の持ち合いの時代。バブル崩壊による持ち合い解消の受け皿は海外投資家だった。アベノミクス相場が一巡して海外勢が売りに回ると、日銀と年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)という「官」が買い支えてきた。

だが、巨額のETFを買い入れて日本株の実質的な筆頭株主になった日銀は3月、購入の目安としてきた「年間6兆円」を取り下げた。「上限12兆円」は維持しているが、実際は4月から現在まで総額約2800億円しか買っていない。市場では「日銀買いは市場をゆがめるという批判がこたえたのでは」との見方がもっぱらだ。

GPIFもすでに運用資産の25%という目標水準まで日本株保有比率を高めている。長期的にみても、年金受給者が増えるにつれて売りに回っていく投資家だ。

そして海外勢が本格的な日本株買いに動く気配はない。こうした状況下で個人の売りがかさめば、日本株は世界からさらに取り残されてしまう。「岸田政権は株式市場をもっと大事にし、日本人が日本株を持てる環境づくりを急いでほしい」。岡三証券グローバルリサーチセンター理事長の高田創氏は警鐘を鳴らす。


個人金融資産2000兆円時代 30年で倍増も米の背中遠く(日経2021年12月20日)

個人の金融資産が年内にも2000兆円を突破する見通しだ。ここ数年は保有株の値上がりも追い風になり、30年前から倍増した。ただ半分強を現預金が占め、国際的にみて安全志向は突出して強い。株・投資信託が金融資産の半分を占める米国は30年で6.7倍に増えた。日本の家計は株高の恩恵を受けづらく、企業にもお金が巡りづらい構図になっている。

日銀が20日発表した9月末の個人の金融資産残高は1999兆8000億円と、過去最高を更新した。増加は6四半期連続で、この間に183兆円増えた。10月以降も米国株高や円安が続き、投信の価格は値上がりが目立っている。12月にはボーナス支給もあり、金融資産は2021年中に2000兆円の大台を突破する公算が大きい。

金融資産がはじめて1000兆円となったのは1990年だった。それから30年あまりで倍増した。賃金がほぼ横ばいにとどまるなか、将来不安から消費を抑え、預金に回す傾向が続いた。高齢化が進み、50歳代以上といった預金の多い世代が増えた面もある。金融資産の名目国内総生産(GDP)に対する比率は90年に2倍強だったが、いまは3.7倍に膨らんだ。

現預金は1072兆円と資産の54%を占める。過去30年間(48~55%)の上限に近い。株と投信の比率は15%と横ばいが続く。国民資産全体でみれば、貯蓄から投資の流れは鈍い。

米国の個人金融資産は114兆ドル(約1京2900兆円)で、国民1人あたりでみても約2.5倍の資産を持つ。金融資産の半分強が株と投信で、株高が国民の資産や消費を押し上げてきた。日本の金融資産は約30年で2倍になったが、米国は6.7倍に膨らんだ。家計マネーが新興企業などにも向かいやすく、イノベーションの素地にもなっている。

日本では家計の潤沢な預貯金は国債に向かっている。2013年以降、日銀が大量に国債を買った結果、銀行の余剰資金は日銀の当座預金にも向かったが、間接的に多くの資金が国債に回っている状況は変わらない。新型コロナウイルスが流行したあと、政府・日銀の資金繰り支援で融資は増えたが、成長投資に向けた資金需要は鈍い状況が続く。

ただ株高基調が続いたことで、若者を中心に変化の兆しもある。日本株のほか、米国株を組み込んだ投資信託などに投資を始める機運が広がりつつある。株と投信の保有額は307兆円と3年ぶりに過去最多となった。少額投資非課税制度(NISA)など制度面の後押しもあり、貯蓄から投資への流れは緩やかながら進んでいる。