私の運用実績2022年4月:評価益は港区南麻布の83㎡新築マンション相当です

マンション本体以外にかかる諸経費

今月の評価益は港区南麻布の83㎡新築マンション相当です。マンションを買う場合には、本体以外に諸経費が必要ですが、港区の1億5千万円程度のマンションの諸経費の一例をあげます。

  • 管理費:2万7800円/月(委託(通勤)
  • 修繕積立金:7300円/月
  • 町内会費:400円/月
  • SESシステム料:2536円/月

4万円近くかかるようです。それ以外に固定資産税などの税金もかかります。

株式相場よりも為替相場の影響が大

私(江戸庄蔵)の評価益は先月より900万円減少しました。1月より1000万円多いのですが、それは株価が上昇したからではなく、為替レートが円安になったからです。私のポートフォリオの4分の3は外国株式ETFなので、為替の影響を強く受けます。

私の金融資産の評価額は、円安のおかげで大幅下落を免れていますが、これで良いのでしょうか?

野口悠紀雄(一橋大学名誉教授)が円安政策について提言をしていますので、それを勉強しましょう。


「円安政策」から一刻も早い脱却を、参院選の争点は物価に

野口悠紀雄:一橋大学名誉教授

これまで日本の消費者物価指数はほぼ輸入価格の変動で左右されてきた。

2つの物価指数の伸び率は強く相関している。消費者物価が場合によっては数カ月の遅れを伴って消費者物価に影響する。

そして輸入価格が上昇すると、その上昇幅の10分の1程度が消費者物価に反映される。

例えば、輸入物価が対前年比で10%上がると、その数カ月後の消費者物価の対前年比が1%程度になるという動きを続けてきた。

輸入物価と消費者物価(生鮮食料品を除く総合)の対前年比(消費者物価については10倍した値、消費税率引き上げと携帯電話料金引き下げの影響を調整してある)の推移を示した図表1を見れば、そのことが如実に分かる。

図表1:輸入物価と消費者物価の対前年上昇率
 ただし、例外的な期間もある、2005~06年頃と07~08年頃には、輸入物価が上昇したが消費者物価は反応しなかった。また、15年頃の原油価格下落期には、消費者物価が十分に下がらなかった。

今回の「転嫁率」は半分程度
需要弱く中小零細は転嫁できず

なぜ、輸入物価の10分の1程度が消費者物価に反映するのだろうか?

これを見るためには、輸入額が企業の原価の中でどのくらいの比率を占めているかを見ればよい。

2020年度の日本の輸入額は64.49兆円だ。

他方、法人企業統計調査によると、法人企業の売上原価の総額は20年度に1016兆円だ(金融機関を除く全産業)。

だから、一見したところ、輸入額は売上原価の5.9%(64÷(64+1016))であるように思われる。

しかし、そうではない。

なぜなら、上記の計算には重複があるからだ。

企業の間では、多段階の取引がある。例えば、部品を生産する企業の売り上げが、組み立て企業の原価になっている。

仮に、日本全体が単一の企業であるとすれば、こうした取引は企業内の取引としてキャンセルアウト(相殺)される。

そして、その企業の売り上げは、国内付加価値の合計(GDP)+輸入額となるだろう。

20年度のGDPは538兆円だ。

したがって、輸入価格が10%上昇すれば、GDP+輸入は602.49から608.94になる。上昇率は1.1%だ。

これは、すでに述べた経験側とほぼ一致する。

つまり、これまでは原材料価格の輸入価格の上昇がほぼ100%消費者物価に転嫁されてきたと考えることができる。

ただし、それは小売り価格に完全に転嫁された場合だ。国内需要が弱ければ、転嫁は難しくなる。

実際、輸入物価が昨年11月、12月に4割上がったのに、携帯電話料金の引き下げ要因を調整した消費者物価は2%程度しか上昇していない。だから、半分しか転嫁していないと考えることができる。
すると、企業の付加価値(売上総利益=売上高-原価)は減る。そのため、賃金を上げられないし、利益も減る。

どれだけ転嫁できるかは企業の価格交渉力による。

中小零細企業が大企業の下請けになっているような場合、原材料価格の上昇を理由として販売価格の引き上げを要求するのは難しいだろう。

一般に、中小零細企業が価格転嫁をすることは難しく、付加価値の圧縮が避けられないだろう。

とくに、今回は原価の値上がりが急だったうえ、新型コロナウィルスの影響で経済の需要が低迷しているため、従来よりも転嫁が難しいと考えられる。

上で見たように、転嫁率が半分程度なのはこのためだと考えられる。

こうして、消費者と企業の双方の不満が高まることになる。

賃金は上がらず、
実質賃金が低下する

連合は3月18日、春闘賃上げの1次集計の結果が2.14%だったと発表した。前年に比べて0.3ポイント余り高く、2%超は3年ぶりだ。

しかし、この数字は電機や自動車といった製造業の大手企業の場合だ。中小企業の賃上げ率はもっと低くなる。

2019年以前にも、春闘賃上げ率は2%を超えたが、経済全体では賃金はほとんど上昇せず、実質賃金の伸びはマイナスだった。

賃金の原資は付加価値だから、企業の付加価値が増えない限り、賃金を上げることはできない。すでに述べたように、中小零細企業では、原価の値上がりを完全に転嫁できない可能性が高いので、賃金を上げることができない。

経済全体の賃金上昇率が物価上昇率を下回り、実質賃金が低下することはほぼ確実だ。

輸入価格高騰の原因は
資源価格上昇と円安

昨年秋以来、輸入物価の上昇率を高めている要因は2つある。

第1は、原油価格を中心とする資源価格がドルベースで上昇していることだ。

第2は、円安の進行だ。

輸入価格の上昇率は、11月、12月に激しく上昇したあと、1月、2月にはやや落ち着いた。4月12日に発表された3月の輸入物価の対前年上昇率は33.4%となった。

2月以降の情勢で重要なのは、つぎの2つだ。

第1は、ロシアのウクライナ侵攻で資源価格の高騰が強まったことだ。

原油価格は2月の初めには1バレル90ドル程度だったが、下旬には100ドルを超えた。

第2は、3月以降の急激な円安の進行だ。

3月9日までほぼ1ドル=115円台だったが、3月10日に116円台、15日に118円台、22日に120円台となった。4月11日では125.39円だ。

今夏の参議院選直前に
消費者物価が高騰の可能性

2022年2月分の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数)の前年同月比は0.6%の上昇だ。

しかし、4月以降、携帯電話料金の要因がなくなることと輸入価格上昇の影響で、6月頃にはかなり高い上昇率になる可能性がある。

7月に予定されている参議院選挙の公示が6月22日だ。

この頃までに問題が収まっている可能性は少なく、むしろ悪化している可能性が強い。

したがって、参議院選の最大の争点は物価問題になるだろう。

政府は物価対策をまとめるというが、対症療法でなく、輸入物価高騰の一因となっている円安を止める必要がある。

原油など資源価格の高騰に対して日本政府ができることは限られているが、為替レートに影響を与えることはできる。

それにもかかわらず、政府・日銀はこれに対して何の政策もとっていない。

それどころか、円安の進行を是認している。

急激な円安が進行したのは、アメリカの金利上昇に対して日本が反応しないからだ。

“円安スパイラル”を阻止せよ
実質の円安水準は固定相場時代並み

今後どうなるか?

アメリカでは賃金の上昇が続き、それによる物価上昇が続く可能性がある。しかし日本では、賃金が上昇しないので、物価上昇率はこれまでと同じように輸入価格の動向によって左右される。

原油をはじめとする資源価格がどうなるかは、さまざまな不確定要因があって読みにくい。だが、今年の秋頃にはドル建て価格の対前年比が低下することが期待される。

しかし、円安は継続する危険がある。

実際、円の実質価値はすでに固定相場制時代にまで逆戻りしている。

国際決済銀行(BIS)が2月17日発表した1月時点の円の「実質実効為替レート」(2010年=100)は67.55となり、1972年6月(67.49)以来の円安水準になった。

1月時点での市場レートは、1ドル=115円程度だった。その後、さらに円安が進んだので、仮に実質レートが比例的に下がるとすれば、実質レートは63.7となる。

これは、固定相場制だった71年11月の63.4と同じくらいの水準だ(なお、3月時点のデータは4月22日に発表の予定)。

日本の金融政策いかんによっては、円安が長期化する危険がある。

それだけでなく、経常収支の赤字を通じて、円安スパイラルに落ち込む危険がある。


20年ぶり円安「悪循環」の危険、日銀はいますぐ長期金利上昇を容認すべきだ

野口悠紀雄:一橋大学名誉教授

18日には鈴木財務相や黒田日本銀行総裁が「急激な円安は問題」と国会で発言したにもかかわらず、円安の流れを変える効果はなかった。

19日の円安は、アメリカの10年国債利回りが18日に2.8%台後半まで上昇したことがきっかけだ。

FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)が5月に追加利上げを行なうのが確実視されるためだが、日本でも10年債利回りは19日には0.25%と、日銀が設定する上限にまで上昇した。

ところが、日銀は10年債利回りの上限を0.25%のままにしている。

3月下旬に長期金利が上限に近づいたときには、0.25%で国債を無制限に買い入れる「連続指し値オペ」を実施し、巨額の国債を購入して長期金利を抑え込んだ。

21日からも5日連続で指値オペの実施を発表している。

日銀が金利上昇を容認しないのでは、円安が進むのは当然だ。

27、28日には日銀の政策決定会議が開かれるが、これまでと同様に「金融緩和を維持」ということであれば、円安は際限なく進むだろう。

鈴木財務相は20日のワシントンでのG7(主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議)で、円安への警戒感を語ったというが、円高介入へのアメリカの協力を求めても、「国内の金利を上げるのが先だ」と言われてしまうだろう。

金利差で円キャリー取引発生
投機取引を支えている日銀

日米間に顕著な金利差があるので、円で資金調達してドルで運用する円キャリー取引が発生する。

仮に将来、円高になれば損失を被るから、これは投機的な取引だ。しかしいまは日銀が金利を抑えているので、ほとんどリスクなしに巨額の利益を得られる。

投機筋にしてみれば、中央銀行が投機取引の利益を保証してくれるという、めったにない機会が起きていることになる。

円キャリー取引は、円を売ってドルを買うので、円安を促進する。このため、さらに円安が進み、それがキャリー取引を増やすという悪循環が生じている。

中央銀行が投機を正当化するような事態は一刻も早く停止すべきだ。そのためにも金利上昇を認めるべきだ。

円の減価率はルーブルより激しい
主要通貨では円の独歩安

ロシアのルーブルはウクライナへの軍事侵攻が行なわれた2月下旬から3月にかけて、欧米諸国による制裁措置の影響で急激に減価した。

しかし3月7日がピークで、それ以降は急激に増価している。

18日現在のレートは1ルーブル0.012ドルで、1月頃のレートとあまり変わりがない。

世界の主要通貨の中で、円が独歩安の状態に陥っているのだ。

放置すれば、破滅的な円安スパイラルに落ち込んでしまう危険がある。

物価上昇率に合わせて
金利上限値引き上げる必要

日銀のイールドカーブコントロール(YCC)で、長期金利の上限値として0.25%が設定されているのは、期待物価上昇率がほぼその程度という想定をもとにしているのだろう。

つまり、実質金利としてはゼロ%近辺が適切と考えられているわけだ。

だが実質金利ゼロの目標を維持するなら、物価上昇率が高まれば、名目金利を引き上げなければならない。

物価が急速に上昇しているにもかかわらず金利目標を名目値で固定すれば、マイナス実質金利幅が拡大してしまい、金融緩和が進みすぎてしまう。

日本の消費者物価上昇率は、携帯電話料金引き下げの影響を調整すれば、現在すでに2%程度になっているはずだ。

だから、名目長期金利目標を2%程度に引き上げる必要がある。

実質金利は、現実の物価上昇率ではなく、期待物価上昇率で評価されるべきだ。いまの日本の期待物価上昇率は2%よりさらに高いかもしれない。

そうであれば、名目長期金利の目標値をさらに高くすることが必要だ。

そもそも、2016年9月に導入されたYCCは、イールドカーブの傾きを急にすることを目的としたものだった。つまり、長期金利の押し上げが狙いだった。

いまこそ、それが必要とされている。

本来、中央銀行は、政策金利として短期金利を操作する。そしてイールドカーブを通じて、間接的に長期金利が決まるようにしている。

これに対して日本の場合には、長期金利もコントロールの対象としている。そして、その上限に近づけば、国債を購入して市場に介入する直接的な方法をとっている。

この方式を改め、長期金利は市場に任せるという本来の姿に戻すべきなのだ。

長期金利上昇の弊害より
企業の原価高騰が問題

長期金利が上昇すると、さまざまな弊害が起きると言われる。

しかし、いまアメリカやイギリスなどの中央銀行が相次いで利上げを行なっているのは、物価が高騰する中で金利をそのままにしておけば、実質金利のマイナス幅があまりに拡大してしまって、経済に歪みを与えるからだ。

日本でも、円安の進行を少しでも抑えることで輸入物価の高騰を抑え、それによって企業の原価上昇を食い止めることが何より重要だ。

日銀は、今回の物価上昇は賃金の上昇を伴わない一時的なものだから対応しないとしているが、一時的にせよ対応すべきだ。物価上昇が収まれば、元に戻せばよい。

低すぎる国債金利負担が
財政の放漫化もたらした

長期金利上昇の問題点としてしばしば指摘されるのは、財政負担の増加だ。

しかし、問題はむしろ長期金利が非常に低かったために、金利負担を考えない財政の大盤振る舞いを許したことだ。

とくに、コロナ禍におけるバラマキ政策がそうだ。

これは、財政収支の問題というよりは、国全体として無駄な資源の使い方がなされてきたという意味で問題だ。

なお、直近の財政収支試算(「中長期の経済財政に関する試算」、2022年1月14日)では、物価上昇率が2%になった場合には長期金利も上昇するという、ごく当然のシナリオになっている。

具体的には、「成長実現ケース」では、消費者物価の上昇率が2026年から2%を上回り、名目長期金利は29年に2.2%、31年には3.0%になるとされている。

これが正常な経済の姿だと考えられているわけだ。

なお、市中の国債利回りが上昇しても、既発行国債の表面利率は元のままだ。したがって、市中金利が上昇してから国債費が増えるまでには、かなりの時間がかかる。

財政収支試算では、長期金利が2%を超えても、国の財政収支(基礎的収支だけでなく国債費なども含めたもの)の対GDP比の赤字は、31年度で1.8%だ。これは、22年度の7.3%に比べて大幅に低い。


今、最も必要なのは、政治家と国民の危機意識ではないでしょうか。