プライマリーバランスの2018年度目標と見込み

◎今日のグラフ=プライマリーバランスの2018年度目標と見込み

財政健全化は目標から遠い

政府は3月末に、経済財政諮問会議で、これまでの財政再建に関する中間評価を発表しました。プライマリーバランス(PB)とは、社会保障や公共事業などの政策経費を、借金に頼らないで賄えているかを示す指標です。日本は2010年のG20で国際公約として、2020年度に黒字化する目標を掲げました。2018年度のPBの赤字額の目標は-5.6兆円でした。しかし、現時点での見通しは16.4兆円でした。つまり、財政健全化は大幅に目標から遠ざかっています。理由は以下の通りと考えます。

① 経済成長の見通しが甘い

もともと、目標を立てるときに、極めて高い経済成長を前提としたことです。それは、だれが見ても、奇跡でも起こらない限り無理でしょう、というレベルでした。そして、奇跡は今のところ起こっていないということです。

② 歳出削減が不十分

必要な財政支出の削減を行ってこなかったことが要因としては大きいと思います。EUにおいては、ギリシャやイタリアの歳出削減に関してドイツが厳しい目を光らせています。しかし、日本においては、目標だけは勇ましく建てますが、実行はなかなか進みません。歳出を削減せずに国債を発行していれば、とりあえず今をやり過ごすことができます。政府が国債をしても日本国内で買い手がいます。具体的には、国民が多額の貯蓄をしていることと、日本銀行が財政ファイナンスをしてくれるからです。ギリシャの場合には国債を発行しても、それを国民が買えるだけの貯蓄がありません。しかし日本においては、団塊の世代をはじめとするシニア層の貯蓄がふんだんにあります。加えて、現在は金融の異次元緩和政策によって、日本銀行が国債を引き受けてくれています。

③ 規制緩和が進まず

規制緩和が進まないため経済成長があまり進んでいないことも問題です。規制緩和によって、新しい産業が生まれて成長することができるはずですが、それには痛みを伴うことが多く、なかなか進みません。

日本人はハイパーインフレに対する認識が薄い

現在の政権与党は、何としてもプライマリーバランスを改善しようとしているとは思えません。それよりも、できるだけ長く政権にしがみついて、まずは憲法改正を実現しいたいと思っているのでしょう。一方で、野党にしても、当面財政再建を打ち出せるような状態ではないと思います。そして、日本人の多くが、歳出削減、増税を受け入れる気持ちになっていないのではないでしょうか。もちろん、そうでない人もいるでしょうが、それは残念ながら少数派のような気がします。多少の痛みは我慢できても、大きな痛みに耐えられる人がどれほどいるでしょうか。ドイツのように、とんでもないハイパーインフレを経験し、しかも、それを学校の教科書などで、大人になるまで、いやというほど繰り返し見せつけられなくては、日本人の意識は変わらないような気がします。ポピュリズムの根っこは深く、いくら理論で解いてみても、なかなか国民の意識は変わらないのではないでしょう。そんな失敗を繰り返しながら、人間は変わっていくと思います。

自己防衛策は、日銀、財務省OBに見習うのが一番

それはともかく、そのようなハイパーインフレになったとしても大丈夫なように、どのように資産防衛を行うかを考えた方がよいと思います。財務省、日本銀行のOBたちは着々と自分の資産の日本円を外貨に換えているようです。日本円のことを一番よく知っている、この人たちの自己資産防衛策を知りたいものです。