キャピタルフライトは既に始まっています。
キャピタルフライト
キャピタルフライトとは、資本がある国から別の国に逃避することを意味しています。経済的に魅力のない国に対して投資をしていた場合は、投資をしていた資金を一斉に引き上げていきます。その国に進出していた外国企業なども撤退することも含まれます。アルゼンチンがかつて財政危機に陥った時にアルゼンチンのペソが大暴落した時には、アルゼンチン国内に進出していた企業がいっきに引き上げたことはかなり有名です。その国の国債の価格やその格付けにも影響を与えます。
三つのマグマ
- 日本人のマグマ:50歳以下の世代は外国株式インデックスファンドに投資している
- 日本政府のマグマ:GDPの2.5倍の国債残高を抱え、今後も増えて行く
- 国土のマグマ:首都直下型、南海・東南海地震を引き起こすエネルギーは溜まっていて、地震が起きれば国民が現金・預金を引き出して住宅を建て、政府は国債を増発して復興を目指す結果、インフレが進み円安になる
1.日本人のマグマ:50歳以下の世代は外国株式インデックスファンドに投資している
投資信託を通じた家計の円売りが膨らんでいる。今年1〜6月の海外の株式・ファンドの買越額は6.1兆円と、同期間の貿易赤字額(4兆円前後)を上回る見通しです。1月に始まった新しい少額投資非課税制度(NISA)を活用した積み立て投資は長期投資が多く、海外への投資マネーの流れは簡単には細りません。月1兆円ペースの円安圧力は今後も続くとの見方が強まっています。
20代、30代の若い人たちは、NISAの運用をSBI証券と楽天証券の口座で始め、運用商品は、純資産総額1位、2位の2銘柄です。
- 1位 eMAXIS Slim 米国株S&P500 63,005億円
- 2位 eMAXIS Slim 全世界株式(オール) 49,672億円
更に、純資産総額4位、5位の2銘柄
- 4位 SBI・V・S&P500インデックスF 20,078億円
- 5位 楽天・全米株式インデックス・ファンド 18,268億円
の2銘柄も、NISA等の積み立てで順調に増えて行くでしょう。
この4銘柄だけで、合計151,023億円です。
3位銘柄は、A・バーンスタイン・米国成長株投信Dは、今後対面証券の営業が売買手数料を受け取るために、新銘柄と入れ替えるでしょうから、順位を落としていくと思われます。それでもこの銘柄は外国株式に投資しているので、キャピタルフライトは着実に進んでいます。
2022年11月27日の日経の記事を読んで見ましょう
老いる日本の株主、70代以上が4割 若者の目は海外株に
【この記事のポイント】
・日本企業の株式は70代以上の株主が41%を保有
・若い層の関心は日本株より上昇力の強い海外株
・最低投資単位引き下げや相続税優遇など課題に
日本企業の株主が老いている。この30年で70代以上の保有額は全体の1割台から4割台に高まった。人口構成を超えるスピードで高齢層に偏った背景に若・中年層の日本株離れがある。国内のリスクマネーが減少に向かっている。
野村証券が実施した投資信託に関する意識調査2024を見てみましょう。
今後購入したい投資信託の種類
50歳以下は全世界株式型と米国株式型
成長投資枠で保有・今後購入したい商品の種類
全世界株式型(インデックス)、米国株式型(インデックス)を多く保有している
つみたて投資枠で保有・今後購入したい商品の種類
全世界株式型(インデックス)、米国株式型(インデックス)を多く保有している
2.日本政府のマグマ:GDPの2.5倍の国債残高を抱え、今後も増えて行く
2024年12月11日 の日経の記事を読んで見ましょう
「インフレなら増税」は可能か
「国の借金を気にする必要はない」。昨今の日本の政治の動きを見ると、そんな現代貨幣理論(MMT)の考えが事実上浸透してしまったのではないかと思えてくる。
10月の衆院選では、ほぼすべての政党が公約で支出拡大や減税の政策を競い合った。財源を真剣に考えている政党は見当たらない。通貨主権がある政府なら、いくらでも国債を発行できるという理論に乗っかれば、アメを与える政策だけで済む。政治家としてこれほど楽なことはない。
政府債務が膨張すればインフレを招くという批判に対して、MMTは「インフレになったら増税や歳出削減で引き締めればよい」という答えを用意している。しかし、現実を踏まえれば、それも難しいだろう。
日本の消費者物価指数は前年比2%を超える伸びを2年以上続けている。大幅な需要不足の時代でもない。にもかかわらず、政府は「昨年度を上回る規模」にこだわって総額13兆円台の大型補正予算案を組んだ。柱の一つはガス・電気料金やガソリン代を対象にした補助金だ。物価高への対応はおカネを配ること。政治的にはわかりやすいが、経済的には需給の逼迫を助長しかねない邪道である。
こんな政治風土のなかで、本格的なインフレ時に増税などで国民に負担を求める政治家や政党が現れることを想像できるだろうか。
MMT信奉者は、最近の物価上昇はエネルギー価格高騰など供給制約に伴うもので、供給拡大のための積極財政が必要だという。財政引き締めが必要になるのは主に需要超過に伴うインフレの場合だと説く。日本の場合、大幅な需要増加によるインフレは考えにくいので、政治家も引き締めの選択を迫られることはまずないということになる。
だが危惧されているのは借金膨張により通貨への信認が失われることで、大幅なインフレが起きるシナリオだ。MMT論者はこうした事態を想定したがらないが、この場合の対応策も財政や金融の引き締め以外に考えられない。
政治が動かなければ、金融市場が国債や円を売り続けて回答を迫ることになるだろう。信認回復のために必要な引き締めはより過酷なものとなり、国民生活は大打撃をこうむることになる。そんな洞察に基づいて行動する政治集団の不在を憂う。
3.国土のマグマ:首都直下型、南海・東南海地震を引き起こすエネルギーは溜まっていて、地震が起きれば国民が現金・預金を引き出して住宅を建て、政府は国債を増発して復興を目指す結果、インフレが進み円安になる
現在は、どんどんお金を印刷し国債を増やしても、あまりインフレにならないし、円安も大したことはない。なぜハイパーインフレにならないのでしょうか。
それは、刷ったお金を現金・預金にして使わないからです。お金が世間に回らなければインフレにはなりません。
では、どうなるとインフレになるのでしょうか?
大きな可能性があるのが、次の二つです。
- キャピタルフライト
- 大地震による住宅再建、政府の災害復興
1.のキャピタルフライトは、NISAをきっかけに静かに始まっています。円を売って、ドルを買っているのです。円安が、さらなるキャピタルフライトを促進します。
2.の大地震はいつ来るか分かりませんが、地殻ではエネルギーを溜めています。