アメリカ株式ETFの来年の狙い目3

株式やETFに関して来年のねらい目は何でしょうか、という記事が雑誌を賑わす季節になりました。フォーチュン(Fortune)誌の記事を参考にして考えてみたいと思います。以下はこの記事の拙訳です。昨日の続きです。

金融銘柄

向かい風を受けているセクターですが、実体経済はウォール・ストリートより強そう

厳しい規制、低成長に陥る業界の中で金融機関は苦労していますが、金融株は一般市場に比べて割安になっています。最近はこのギャップが大きく開いているように見えます。S&P500金融株は11月初めに2020年予想利益の12.8倍でしたが、全体のインデックスは平均18倍でした。

来年の利益は減少

この見劣りする数字には多くの点で納得できます。実は、アナリストはこのセクターの利益が来年減少すると予想しています。フェドが低金利政策にかじを切ったことで、ネットの利子所得――預金利子と貸出金利の差額――を得ることが難しくなりました。投資銀行業務に的を絞ったゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーは、ハイテク企業が引き起こしたイノベーションのために資本市場や取引の利鞘が減った結果、利益が減少しました。そして景気が悪化した場合には、セクター全体も悪くなり易い。「銀行は実に割安に思えるが、更なる逆風がある」と、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーのアクティブ量的株式部門のCIOオリビア・エンゲルは言います。

向かい風に出航せよ

この件について「向かい風に出航せよ」という投資家もいます。「マーケットは景気後退リスクを意識して、銀行をあまりに低く見過ぎだ」と、マヌライフ投資マネジメントのグローバル・アセット・アロケーション部門長ネイザン・スーフトは言います。「経済が景気後退に陥らないで適度な貸し出しの伸びがある限り、銀行は利益を出すだろう。」

重圧に耐える

米国の設備投資は最近数か月間落ち込んでいますが、消費支出はまだ堅調に上昇しています。

黒い線:ネットの設備投資

茶色い線:米国高利消費

バンカメの戦略

現在の利益は、ウォール・ストリートのディーラーでなく、消費者に対面する会社から流入しているように思えます。バンク・オブ・アメリカはCEOブライアン・モイニハンの長期経営のもとで、しっかりした利益成長を成し遂げてきましたが、彼は収入を増加させるとともに費用を抑えてきました。バンカメは、数百億ドルをかけて技術インフラを開発・更新するとともに、数千の支店を改善し数百に及ぶリアルな支店を新規に開店させました。

ローカル市場

地域の銀行に価値を見出す投資家もいて、ローカル市場ごとに違いがあるために業績の一番良い企業が輝く場合があります。「地域において最良と最悪の企業の違いがはっきりと判ります。」と、保険会社コニングの株式ストラテジスト部長のドン・タウンズウィックは言います。ロードアイランド州プロヴィンスにあるシチズン・フィナンシャル・グループは、11州において数千の支店とATMを運営し、そのほとんどは北東部ですが、そこでは経済が活況なので成長が見込まれています。しかし2020年度の株価収益率は10倍に届きません。

厳しい投資運用

もっと難しい領域が投資運用です。厳しい競争が引き金となって、ファンドの供給者が料金と手数料を徹底的に削減する競争を行っています。

チャールズ・シュワブ

チャールズ・シュワブの株主は、2019年にジェットコースターに乗っていたようなものです。シュワブは過去12か月間に、収入と利益は2桁成長を果たしましたが、株価は11%近く下がりました。アライアンス・バーンスタインのティアニーは、これを購入チャンスだと考えています。「シュワブは金融の世界のアマゾンだと見ている」と彼は言います。「顧客に対するサービスのためのコストは他のどこよりも低い」。こうすることによって、シュワブは株式取引無料化への動きを、競合会社よりも容易に我慢できるはずです。

ペイパル

キャッシュレス決済が急速に進行し、全ての種類の企業が取り組んでいますが、ペイパルほどうまくサービスを提供して対応している企業はありません。パイパルは、米国インターネット小売業の上位500社の内4分の3以上に受け入れられ、同社のベンモ・プラットフォーム経由でモバイル送金できるので、羨望の的になっています。同社はハイテク企業の株価で取引されていて、2020年度の予想株価収益率は29倍です。しかしながら、アナリストは来年ペイパルの売上が17%増になり、その評価は妥当だと予想しています。

大胆な賭け

サンフランシスコに本拠を置く巨大銀行ウェル・ファーゴは、偽銀行口座スキャンダルと積極的販売策という、自ら招いてしまった失策からの回復に苦労していて、つらい時期でした。また同行は、住宅ローン、カーローン、クレジットカードなど、消費者との対面サービス業務を手広く行っていて、利益を出しています。BNYメロン社の前CEOで、評判の高いチャールズ・シャルフが新たにCEOに就任したため、ウェル・ファーゴは過去と決別して新たな時代の幕を開けると投資家は考えています。現在、同社の株は52週間ぶりの高値をつけていますが、まだセクターの平均を下回っています。

狙い目

バンク・オブ・アメリカ

シチズンズ・フィナンシャル・グループ

チャールズ・シュワブ

ペイパル

ウェル・ファーゴ